お金のありがたさを知る

お客様が持っていらっしゃるお金はどんなお金か

「金はよほどの例外以外、そう簡単に手に入るものではないのです。お客様のふところにあるお金は、みんなそれこそ血みどろの段階をへて、ふところの紙幣となっているのである。悪戦苦闘でないものはないであろう。過去において、現在において、客の胸中には、それがある。絶えることなくそれがある。偶然性などはヒトカケラもない」

これはある著名人のエッセイなのですが、何を感じられたでしょうか。

何も知らない貴女たちは「この人お金もってるわ…」などと言っているのではないでしょうか。ただ持っているのではなく血みどろのお金を持っておられるのです。そういう因縁のお金を、そういうことは表面に出さず、細かい事は言わず、黙ってつかっているだけで男の金というものはそういうものなのです。

貴女たちは、間違っても「この人お金もってるワ」だけの批評はやめてほしいと思います。

男の金の意義というものがわかってくれば、つまりお金のありがたさがわかってくれば自然とお客様に対する態度も変わってくるように思えます。

ホステス業に限らず一般の人の場合でも、お金のありがたさを知っている人間と知らない人間とでは、まるで人間の幅が違うものです。酒場は派手な場所ですが、お客様も、ホステスも、直接そういう言葉は口にあらわさないとしても、いつも頭の中にあるものは、お金である、酒場すなわちお金、そういう場所なのです。

だから、そこで働く人たちは、お金というものを、もっと真剣に考えてもらわなければならないのです。

これはホステスというよりお店自体のことになるかも知れないのですが、高額な勘定代をつけて、客に請求するお店は、お金のありがたさを知らない経営者のやっている店で、同時にいいかえるとその経営者の下にいる店長も幹部もホステスも同じ穴のムジナで、お金のありがたさを知らない連中ばかりだという事になるのです。

お客様がせっかく使って下さるお金です。せめてお金のありがたさを知っているお店で使いたいと思われるのは人情でしょう。

誰の場合でも、そのお店の勘定が安い高いよりその店が本当に「お金のありがたさ」を知っているならば、お客様に感謝の気持ちを忘れず心から大切に接するから、その店に行きたくなるのです。

それとなくご予算、ご予定をお伺いしましょう。

ご指名のお客様とはホステスさんのおなじみのお客様ですから親しい間柄ですね。そのお客様がおいでになり、ひと息呑んでくつろいだ時に「今夜はゆっくりしていって下さる?」と今夜の予定をうかがいましょう。ゆっくりできないけれど来て下さったのであれば、他のテーブルを回る時にも、あまり間は空けぬ事を心がけましょう。ゆっくりできない場合は予算が少々心細い場合もありますから、失礼にならないように、上手に今夜のご予算をうかがうことも、親切なのです。その思いやりは二度三度目には、お客様の方から「今夜はこれくらいでとめておいてくれよ」と気軽に言って下さるようになるでしょう。貴女とこのお客様の間には見栄を必要としない親しさが交流するでしょう。

初めてのお客様の場合はこっそりと、そしてあっさりとおたずねしましょう。

「ゆっくりしていらっしゃれるんでしょう」「ご予算はよろしいでしょうか」と伺った時、なぜ聞くか?と返事があった場合は、「ぼったりするお店と思われたら嫌ですから、ゆっくり楽しんで遊んで行って、また来ていただきたいから」と言って下さい。

楽しむというのは安心して遊んでいただくことなのです。

お客様への思いやりのあるホステスであることを、言葉で見せるという事、これは大切なホステスの営業なのです。

 

 



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